楽譜『ゴンドラの唄 ギターソロ 西川恭・編』G&M刊
◎演奏形態:ギターソロ、ギター独奏
◎頁数:A4サイズ 計4ページ
・五線譜:2ページ
・五線譜+タブ譜:2ページ
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1915年(大正4年)作詞:吉井勇 作曲:中山晋平
いのち短し、恋せよ乙女——「ゴンドラの唄」と言えば、この歌い出しの名フレーズに尽きます。
「ゴンドラ」とは水の都ヴェネツィアの水路を行く手漕ぎボートのこと。はかない若さと熱い恋心を、先をも知れず漂いながら進む舟路になぞらえた歌です。
森鴎外が翻訳したアンデルセンの作品『即興詩人』の中に「朱の唇に触れよ、誰れが汝の明日猶在るを知らん。恋せよ汝の猶少(わか)く、汝の血猶熱き間に…」というヴェネツィア民謡が出てきます。作詞者の吉井勇氏はこの一節をもとにして「ゴンドラの唄」の歌詞を書いたのだそうです。
クラシック音楽で《舟歌》と呼ばれる形式があります。8分の6拍子や8分の9拍子の漂うようなリズムと、軽快な中にもどこか憂いを含んだメロディーが特徴です。「ゴンドラの唄」はその形式を取り入れた、日本で最初の“舟歌ポップス”と言えます。時は大正4年、今から100年前です。
社会現象にまでなった「カチューシャの唄」に続く芸術座公演の劇中歌ということで大いに話題になりましたが、前作ほどの大流行とはならなかったようです。作曲者の中山晋平は後に「拍子が少々わかりづらかったのではないか」とか「この曲は失敗だった」とさえ発言しています。大衆感覚の先を行き過ぎてしまったと思ったのでしょう。
けれど誕生から時を経て、戦後、黒澤明監督の『生きる』の中で印象的に歌われ、現在でも多くの歌手がとりあげる人気曲。晋平自身が感じたように、当時としては少々先進的に過ぎた、言ってみれば“早すぎた名曲”だったのかも知れません。