9月も中旬まではまだ30度超の夏の暑さが続いていましたが、秋分を迎えると突然に涼しさがやってきました。「或る日突然」とはこのことか、というような秋のおとずれです。
そんなわけでチャコ&チコの歌声喫茶《夕空晴れて秋歌ひびく》はかろうじて、秋らしい空気の中で二日間開催することができました。
ふりかえってみると、長い休止期間を経て歌声喫茶を再開したのが昨年の秋でしたから、それから一年が過ぎたわけです。かつてのように毎週2回いつでも気軽にというわけにはいきませんが、それでも、会場内は良い意味での日常感といいますか、力まずに自然体で楽しめる雰囲気になってきたような気がします。
いつものように肩回し、ギューストンの準備体操からはじまります。チャコのピアノのBGMを聴きながら、心と体をほぐしていきましょう。チコの少々間の悪い合図はご愛嬌。
続けて、発声練習です。音階をゆっくりと、そしてスタッカート(音を切って)。「普段はあまり大きな声を出さないので、どうも声が出にくくて」というお客様からのお声をよく耳にします。あまり無理をせず、音程もさほど気にせずに、まずは調子を整えながら声を出していただけたら幸いです。
さあ、いよいよ秋の歌声喫茶、開演です。
1曲目は「ちいさい秋みつけた」。やはり秋にはセンチメンタルな歌を味わいたいもの。《誰かさんが、誰かさんが》とくりかえしながら秋の愁いにひたっていきます。
「あざみの歌」もしっとりと。最後は「ああああ〜」とたっぷりと歌い上げて、余韻を味わうところまでがワンセットです。
続く「古城」「ブルー・シャトウ」は日本の城、西洋の城をイメージして歌う2曲。しばし、悠久の時に身をひたします。
《静かな、静かな》と「里の秋」を歌いながら思い出したことがあります。ここ数日、ようやくエアコンと扇風機のスイッチをオフにする時間が増えてきて、その時にふと感じた静けさ。長い夏の間、当たり前のように「ゴー」「サー」という空調機器の作動音の中で過ごしていたことにあらためて気づかされ、この相対的な静けさが現代の秋のしるしなのかと少し複雑な感慨をおぼえた次第です。
休憩をはさんで後半は「故郷の空」からスタート。今回の開催タイトル《夕空晴れて秋歌ひびく》はこの歌のフレーズから拝借しています。さらに「誰もいない海」「湖畔の宿」「ローレライ」と水辺の歌を三編。海、湖、川、それぞれの情景に秋の感傷を重ねて味わいました。
「君恋し」は昭和初期に二村定一さんのレコードがヒットし、昭和30年代にフランク永井さんでリバイバルヒットした名曲。今回はフランク永井さんのスウィングバージョンで、ミディアムテンポに身をまかせてムーディーに楽しみました。
クライマックスは「高校三年生」。最後のフレーズ《越えて歌おう この歌を〜》は息が続くかぎり伸ばすのがお約束です。ラストソングの「白いブランコ」は呼吸を整えながら、余韻を楽しむように。
こうして秋の歌声喫茶は皆さんの穏やかな笑顔で幕を閉じました。次回の開催は11月。秋から冬へとうつりかわる季節を感じながらの二日間となります。