歌のモチーフは明治28年(1895)に発表された樋口一葉の短編小説『十三夜』。
ある十三夜の晩、主人公・お関は自分に対して冷淡な夫と離縁したいという想いを両親にうちあけるために実家へ。両親は娘のきもちに理解をしめすも、こどものためにも元の家にもどるように諭し、お関も涙をのんでこれまでどおりに夫と暮らしていくことを決意する。実家からの帰り道、よびとめた人力車を引いていたのは、かつてたがいに恋心をいだいていたおさななじみの録之助だった——。
歌詞に描かれているのは、この二人の再会の場面です。偶然の再会をしたものの、ほんのひとときことばをかわし、また元の家へと帰ってゆく。「青い月夜の十三夜」のフレーズが美しい余韻を残します。それぞれの想いが交錯するもようを、まんまるでない十三夜の月が照らしている、というのがなんだか意味深く感じられます。
作曲者の長津義司氏(1904 – 1986)は田端義夫さんの「大利根月夜」や「玄海ブルース」、三波春夫さんの「チャンチキおけさ」など戦前から昭和30年代にかけてヒット曲を世に送り出しました。