理不尽な別れを嘆くブルースで戦後の人々の心を癒した「港が見える丘」の東辰三(作詞・作曲)と歌手・平野愛子による同時期の傑作です。
「港が〜」と同じモチーフの曲といえますが、「君待てども」の方が哀しみの色合いが強く感じられるのは、文語調で綴られる淡々した詩的なつぶやきによるところかもしれません。
《君待てども 君待てども》《あきらめましょう あきらめましょう》と繰り返されるフレーズは言葉とは裏腹にあきらめられない想いのようでもあり、同時にどこか安らぎも感じさせます。
編曲を担当した佐野鋤(さの・たすく)氏は昭和初期から東京のジャズ界で活躍した管楽器(サックス/クラリネット等)プレイヤーです。「響友会」と呼ばれる音楽家同士の勉強会のメンバーとして作曲家・服部良一氏との親交も深く、ジャズや流行歌の作編曲で活躍しました。
昭和30年代からはTBSの歌謡番組「ロッテ歌のアルバム」の編曲と指揮を長年にわたって担当しました。佐野氏のジャズ・ブラスアレンジが本曲のたいへん重要な味わいとなっていることもまちがいありません。