李香蘭(山口淑子)主演の映画「支那の夜」の劇中歌として発表されました。
蘇州は長江の南側、上海に隣接する都市。古くから水運の町として栄え「東洋のヴェニス」とも呼ばれてます。歌詞の最後に登場する寒山寺は臨済宗の仏教寺院。毎年大晦日に除夜の鐘が鳴らされ、その鐘の音をきくと10歳若返るといわれます。
映画『支那の夜』は流行歌「支那の夜」(歌:渡辺はま子 作詞:西條八十 作曲:竹岡信幸)のヒットを受けて作られました。長谷川一夫と李香蘭という東宝/満映の看板スターの共演によるいわゆる“大陸三部作”の第2作目となります。劇中では「支那の夜」「蘇州夜曲」をヒロインの李香蘭が歌っています。
中国的な音階や中国の伝統楽器二胡を思わせる流麗な旋律の中に、日本の大衆歌謡としての歌心と抒情性が溢れています。ジャズ、ブルース、タンゴなど当時最先端だった外国音楽を取り込み、和製ポップスの礎を築いた服部メロディーの神髄がたっぷりと感じられる一曲です。
服部良一氏は日中戦争中の昭和13年、芸術慰問団の一員として蘇州を含む中国各地を訪れています。ただし「蘇州夜曲」のメロディーの直接的なイメージは実は蘇州ではなく、蘇州から150kmほどの都市・杭州にある西湖(せいこ)での感慨がもとになっているのだそう。杭州は中国八大古都(洛陽、鄭州、安陽、西安、開封、南京、北京)のひとつ。江南運河の終着点として隋の時代から経済・文化の中心地として栄えた、こちらもやはり「水の都」です。
【参考文献】
『ぼくの音楽人生』服部良一・著(日本文芸社)
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